税理士試験法人税法受験生のブログ

法人税法、質疑応答事例等のまとめをしてます。

法人税法 質疑応答事例【その他損益】【売買とされるPFI事業について(法人税の取扱い)】

【結論】

【参考】のような契約を締結して行われるPFI事業について、その資産の契約形態が賃貸借であったとしても、その賃貸借の目的となる資産の引渡しの時にその資産の売買(リース取引の意義と照らして売買取引のリース取引に該当)があったものとされるとともに、民間事業者Aが一定の延払基準の方法により経理したときは、法人税法第63条第1項((リース譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度))の規定の適用ができる。


【参考】

1 事業の概要

 本事業は、民間事業者AがPFI法に基づき建設・所有するB館を、契約期間中(30年間)はC県に賃貸しながら、そのB館の維持管理の業務を受託するというものであります。

 なお、契約期間経過後には、民間事業者Aが有するB館の所有権をC県に対して無償で譲渡します。


[参考]

PFI : Private Finance Initiativeの略です。

PFI法 : 「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(平成11年7月30日法律第117号)」の略です。

PFI事業 : 公共施設等の整備等に関する事業であって、民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用することにより効率的かつ効果的に実施されるものをいいます(PFI法第2条第2項)。

2 サービスの対価の支払

 C県は、民間事業者Aに年2回・30年間払いによってサービスの対価を支払うこととしていますが、その対価のうち賃貸料相当額の部分については、本件工事費等及びこれに係る支払利息相当額が積算の基礎となっています。


3 運営と観覧料の徴収・管理

 B館は、民間事業者Aがその所有権を有しますが、対外的に「C県立B館」の名で運営されるとともに、C県は、B館の入館者から観覧料を徴収(実際の徴収事務は民間事業者Aに委託しますが、当日分の観覧料は県の出納員に引継ぎ)し管理します。


4 契約期間の中途における契約の終了

 契約期間の中途において、契約不履行等の一定の事実が生じた場合には、契約の終了があり得ますが、その場合であっても、C県はB館の所有権をすべて保持・取得した上で、契約終了時における本件工事費等の残額及びこれに係る支払利息相当額の合計額の90%ないし100%相当額を民間事業者Aに対して支払います。


売買とされるPFI事業について(法人税の取扱い)の概要図




【回答要旨】

(理由)


1 売買とされるリース取引

 法人が一定のリース取引を行った場合においては、そのリース資産の賃貸人から賃借人への引渡しの時にそのリース資産の売買があったものとして、賃貸人又は賃借人である法人の各事業年度の所得の金額を計算することとされています(法人税法第64条の2第1項)。

 また、上記の一定のリース取引とは、資産の賃貸借(所有権が移転しない土地の賃貸借などが除かれますが、建物の賃貸借は除かれません。)で、次の要件を満たすものとされています(法人税法第64条の2第3項)。


(1) その賃貸借に係る契約が、賃貸借期間の中途においてその解除をすることができないものであること又はこれに準ずるものであること。


(2) その賃貸借に係る賃借人がその賃貸借に係る資産からもたらされる経済的な利益を実質的に享受することができ、かつ、その資産の使用に伴って生ずる費用を実質的に負担すべきこととされているものであること。


2 本事業の要件判定

 本事業が上記1の「売買とされるリース取引」に該当するかどうかについては、次のとおりです。


(1) 資産の賃貸借であること

 本事業の民間事業者AとC県との間で締結された契約書の条項によれば、民間事業者Aは、B館について、本件引渡日から(30年後の)X年3月31日までの期間、C県に賃貸することとなっています。


(2) 解除をすることができないものに準ずるものであること

 対象となるリース取引の要件の一つに、その賃貸借に係る契約が、賃貸借期間の中途においてその解除をすることができないものに準ずるものであることが掲げられています。その一例として、「資産の賃貸借契約に解約禁止条項がない場合であって、賃借人が契約違反をした場合又は解約する場合において、賃借人が、当該賃貸借に係る賃貸借期間のうちの未経過期間に対応するリース料の額の合計額のおおむね全部(原則として100分の90以上)を支払うこととされているもの」があります(法人税基本通達12の5-1-1の(1))。

 本事業の契約書の条項によれば、契約期間の中途において、契約不履行等の一定の事実が生じた場合には、契約の終了があり得ますが、その場合であっても、C県はB館の所有権をすべて保持・取得した上で、契約終了時における本件工事費等の残額及びこれに係る支払利息相当額の合計額の90%ないし100%相当額を民間事業者Aに対して支払うこととなっています。


(3) 経済的利益の実質的な享受者であること

 対象となるリース取引の要件の一つに、その賃貸借に係る賃借人がその賃貸借に係る資産からもたらされる経済的な利益を実質的に享受することができることが掲げられています。

 本事業において、B館は、民間事業者Aがその所有権を有しますが、対外的に「C県立B館」の名で運営されるとともに、C県は、B館の入館者から観覧料を徴収(実際の徴収事務は民間事業者Aに委託しますが、当日分の観覧料は県の出納員に引継ぎ)し管理することとなっています(C県財務規則、条例)。


(4) 使用費用の実質的な負担者であること

 対象となるリース取引の要件の一つに、その賃貸借に係る賃借人がその資産の使用に伴って生ずる費用を実質的に負担すべきこととされているものであることが掲げられています。これについては、その賃貸借期間中に賃借人が支払うリース料の額の合計額が、賃貸人における賃貸借資産の取得価額及びその取引に係る付随費用(賃貸借資産の取得に要する資金の利子、固定資産税、保険料等その取引に関連して賃貸人が支出する費用をいう。)の額の合計額のおおむね全部(原則として100分の90以上)とされていることをいうと取り扱われています(法人税法施行令131の22、法人税基本通達12の5-1-2)。

 本事業の契約書の条項によれば、C県は、民間事業者Aに年2回・30年間払いによってサービスの対価を支払うこととしていますが、その対価のうち賃貸料相当額の部分については、本件工事費等及びこれに係る支払利息相当額が積算の基礎となっています。


3 法人税法第63条第1項((リース譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度))の規定

 内国法人が、1に掲げる一定のリース取引によるリース資産(そのリース取引の目的となる資産)の引渡しを行った場合において、その資産の販売等に係る収益の額及び費用の額につき、その資産の販売等に係る目的物の引渡しの日の属する事業年度以後の各事業年度の確定した決算において一定の延払基準の方法により経理したときは、その経理した収益の額及び費用の額は、その事業年度の所得の金額の計算上、益金の額及び損金の額に算入することとされています(法人税法第63条第1項、第2項)。


4 結論

 以上のことからすれば、本事業については、その資産の契約形態が賃貸借であったとしても、上記2のとおり、上記1の売買とされるリース取引に該当することから、その賃貸借の目的となる資産の引渡しの時にその資産の売買があったものとされるとともに(法人税法第64条の2)、民間事業者Aが一定の延払基準の方法により経理したときは、法人税法第63条第1項((リース譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度))の規定の適用ができると解されます。





【照会要旨】

 次のような契約を締結して行われるPFI事業については、その資産の契約形態が賃貸借であったとしても、その賃貸借の目的となる資産の引渡しの時にその資産の売買があったものとされるとともに(法人税法第64条の21)、民間事業者Aが一定の延払基準の方法により経理したときは、法人税法第63条第1項((リース譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度))の規定の適用ができると解して差し支えないでしょうか。


1 事業の概要

 本事業は、民間事業者AがPFI法に基づき建設・所有するB館を、契約期間中(30年間)はC県に賃貸しながら、そのB館の維持管理の業務を受託するというものであります。

 なお、契約期間経過後には、民間事業者Aが有するB館の所有権をC県に対して無償で譲渡します。


[参考]

PFI : Private Finance Initiativeの略です。

PFI法 : 「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(平成11年7月30日法律第117号)」の略です。

PFI事業 : 公共施設等の整備等に関する事業であって、民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用することにより効率的かつ効果的に実施されるものをいいます(PFI法第2条第2項)。

2 サービスの対価の支払

 C県は、民間事業者Aに年2回・30年間払いによってサービスの対価を支払うこととしていますが、その対価のうち賃貸料相当額の部分については、本件工事費等及びこれに係る支払利息相当額が積算の基礎となっています。


3 運営と観覧料の徴収・管理

 B館は、民間事業者Aがその所有権を有しますが、対外的に「C県立B館」の名で運営されるとともに、C県は、B館の入館者から観覧料を徴収(実際の徴収事務は民間事業者Aに委託しますが、当日分の観覧料は県の出納員に引継ぎ)し管理します。


4 契約期間の中途における契約の終了

 契約期間の中途において、契約不履行等の一定の事実が生じた場合には、契約の終了があり得ますが、その場合であっても、C県はB館の所有権をすべて保持・取得した上で、契約終了時における本件工事費等の残額及びこれに係る支払利息相当額の合計額の90%ないし100%相当額を民間事業者Aに対して支払います。


売買とされるPFI事業について(法人税の取扱い)の概要図



【回答要旨】

 照会の事実を前提とすれば、貴見のとおりで差し支えありません。


(理由)


1 売買とされるリース取引

 法人が一定のリース取引を行った場合においては、そのリース資産の賃貸人から賃借人への引渡しの時にそのリース資産の売買があったものとして、賃貸人又は賃借人である法人の各事業年度の所得の金額を計算することとされています(法人税法第64条の2第1項)。

 また、上記の一定のリース取引とは、資産の賃貸借(所有権が移転しない土地の賃貸借などが除かれますが、建物の賃貸借は除かれません。)で、次の要件を満たすものとされています(法人税法第64条の2第3項)。


(1) その賃貸借に係る契約が、賃貸借期間の中途においてその解除をすることができないものであること又はこれに準ずるものであること。


(2) その賃貸借に係る賃借人がその賃貸借に係る資産からもたらされる経済的な利益を実質的に享受することができ、かつ、その資産の使用に伴って生ずる費用を実質的に負担すべきこととされているものであること。


2 本事業の要件判定

 本事業が上記1の「売買とされるリース取引」に該当するかどうかについては、次のとおりです。


(1) 資産の賃貸借であること

 本事業の民間事業者AとC県との間で締結された契約書の条項によれば、民間事業者Aは、B館について、本件引渡日から(30年後の)X年3月31日までの期間、C県に賃貸することとなっています。


(2) 解除をすることができないものに準ずるものであること

 対象となるリース取引の要件の一つに、その賃貸借に係る契約が、賃貸借期間の中途においてその解除をすることができないものに準ずるものであることが掲げられています。その一例として、「資産の賃貸借契約に解約禁止条項がない場合であって、賃借人が契約違反をした場合又は解約する場合において、賃借人が、当該賃貸借に係る賃貸借期間のうちの未経過期間に対応するリース料の額の合計額のおおむね全部(原則として100分の90以上)を支払うこととされているもの」があります(法人税基本通達12の5-1-1の(1))。

 本事業の契約書の条項によれば、契約期間の中途において、契約不履行等の一定の事実が生じた場合には、契約の終了があり得ますが、その場合であっても、C県はB館の所有権をすべて保持・取得した上で、契約終了時における本件工事費等の残額及びこれに係る支払利息相当額の合計額の90%ないし100%相当額を民間事業者Aに対して支払うこととなっています。


(3) 経済的利益の実質的な享受者であること

 対象となるリース取引の要件の一つに、その賃貸借に係る賃借人がその賃貸借に係る資産からもたらされる経済的な利益を実質的に享受することができることが掲げられています。

 本事業において、B館は、民間事業者Aがその所有権を有しますが、対外的に「C県立B館」の名で運営されるとともに、C県は、B館の入館者から観覧料を徴収(実際の徴収事務は民間事業者Aに委託しますが、当日分の観覧料は県の出納員に引継ぎ)し管理することとなっています(C県財務規則、条例)。


(4) 使用費用の実質的な負担者であること

 対象となるリース取引の要件の一つに、その賃貸借に係る賃借人がその資産の使用に伴って生ずる費用を実質的に負担すべきこととされているものであることが掲げられています。これについては、その賃貸借期間中に賃借人が支払うリース料の額の合計額が、賃貸人における賃貸借資産の取得価額及びその取引に係る付随費用(賃貸借資産の取得に要する資金の利子、固定資産税、保険料等その取引に関連して賃貸人が支出する費用をいう。)の額の合計額のおおむね全部(原則として100分の90以上)とされていることをいうと取り扱われています(法人税法施行令131の22、法人税基本通達12の5-1-2)。

 本事業の契約書の条項によれば、C県は、民間事業者Aに年2回・30年間払いによってサービスの対価を支払うこととしていますが、その対価のうち賃貸料相当額の部分については、本件工事費等及びこれに係る支払利息相当額が積算の基礎となっています。


3 法人税法第63条第1項((リース譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度))の規定

 内国法人が、1に掲げる一定のリース取引によるリース資産(そのリース取引の目的となる資産)の引渡しを行った場合において、その資産の販売等に係る収益の額及び費用の額につき、その資産の販売等に係る目的物の引渡しの日の属する事業年度以後の各事業年度の確定した決算において一定の延払基準の方法により経理したときは、その経理した収益の額及び費用の額は、その事業年度の所得の金額の計算上、益金の額及び損金の額に算入することとされています(法人税法第63条第1項、第2項)。


4 結論

 以上のことからすれば、本事業については、その資産の契約形態が賃貸借であったとしても、上記2のとおり、上記1の売買とされるリース取引に該当することから、その賃貸借の目的となる資産の引渡しの時にその資産の売買があったものとされるとともに(法人税法第64条の2)、民間事業者Aが一定の延払基準の方法により経理したときは、法人税法第63条第1項((リース譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度))の規定の適用ができると解されます。


国税庁ホームページ質疑応答事例法人税

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/26/03.htm

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