税理士試験法人税法受験生のブログ

法人税法、質疑応答事例等のまとめをしてます。

法人税法 質疑応答事例【その他損益】【租税特別措置法第67条の15《投資法人に係る課税の特例》の適用における投資法人が行う投資口の払戻しに伴うみなし配当の取扱いについて】

【結論】

オープン・エンド型の投資法人が投資口の払戻請求に応じた場合には、《配当等の額とみなす金額》に規定する「出資の払戻し」に該当し、このみなし配当は、措置法第67条の15第1項《投資法人に係る課税の特例》に規定する「配当等の額」に含まれ、期末配当のように各事業年度毎に作成される金銭の分配に係る計算書に記載される物ではなく、投資口の払戻しを行った事業年度の損益計算書に反映されるものであり、当該各事業年度との対応関係が明らかではない為、投資法人が行うみなし配当について、その払戻しの効力が生ずる日(払戻金額の支払の日)を含む事業年度に係るものとし、当該事業年度を適用事業年度と取扱ってよろしいでしょうか?


(注)投資法人に係る課税の特例制度(措法67の15)や特定同族会社の特別税率制度(法法67)などについては、事業年度後の株主総会等で決定される決算配当(期末配当)を当該事業年度の所得・税額計算に影響させるものとなります。



【回答】

 照会の事実関係を前提とする限り、貴見のとおり取り扱って差し支えありません(払戻しの効力が生ずる日(払戻金額の支払の日)を含む事業年度に係るものとし、当該事業年度を適用事業年度と取り扱う)。


投資口(資本)の払戻し等に伴い生じるみなし配当は、平成18年度税制改正前から特定の事業年度と対応させる税務処理は行われておらず、その効力発生日(払戻金額の支払の日)において税務処理が行われることとされており、投資法人の課税の特例制度においても、その効力発生日の属する事業年度に係るみなし配当と取り扱うこととなること等。


【参考】

(理由)


 投資口の払戻しに伴うみなし配当については、次に掲げる事項からすれば、その払戻しの効力が生ずる日(払戻金額の支払の日)を含む事業年度に係るものとし、当該事業年度を適用事業年度と解して投資法人に係る課税の特例制度を適用することが相当です。


① 照会要旨にもあるとおり、期末配当は、当該各事業年度における金銭の分配に係る計算書に記載されており、その金銭の分配に係る計算書は、旧商法における利益処分計算書に類するようなものであって当該各事業年度における利益処分の内容を記載するものであるため、当該各事業年度との対応関係が明らかである。一方、投資口の払戻しに伴うみなし配当は、その金銭の分配に係る計算書に記載されず、投資口の払戻しを行った事業年度の損益計算書に反映されていることから当該各事業年度と対応させる根拠がないこと。

② 投資口の払戻しに伴うみなし配当は、時価評価により含み損益の精算をすることに加え、特定の事業年度の利益のみならず過去からの繰越利益をも精算するものであり、この点からも直近に終了した事業年度と対応させる根拠がない。

③ 投資口(資本)の払戻し等に伴い生じるみなし配当は、平成18年度税制改正前から特定の事業年度と対応させる税務処理は行われておらず、その効力発生日(払戻金額の支払の日)において税務処理が行われることとされており、投資法人の課税の特例制度においても、その効力発生日の属する事業年度に係るみなし配当と取り扱うこととなること。

④ 平成18年度税制改正後においても、みなし配当に係る考え方に変更はないことから、投資法人の課税の特例制度の適用における投資法人が行う投資口の払戻しに伴うみなし配当についても、平成18年度改正前と同様の取扱いとなること。

(参考)


1 投資法人に係る課税の特例制度

 投資法人が支払う金銭の分配(出資総額等の減少に伴う金銭の分配として法人税法施行規則第8条の4に定めるものを除きます。)の金額(法人税法第24条の規定により配当とみなされる金額を含みます。)で、一定の要件を満たす事業年度(適用事業年度)に係るものは、当該適用事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入されます(措法67の15①)。


2 配当と事業年度の対応関係

 会社法の制定により配当と事業年度との対応関係がなくなったことに伴い、平成18年度の税制改正において、それまでは事業年度終了後の株主総会等で決定される期末配当を当該事業年度末において利益積立金額から減算することとしていたものを、その決算配当の効力の生ずる日に減算することとされました(法令9①八、法規別表四など)。

 ただし、投資法人に係る課税の特例制度(措法67の15)や特定同族会社の特別税率制度(法法67)など、従前の期末配当の額が直接所得・税額計算に影響する制度については、従前の期末配当と同様に事業年度後の株主総会等で決定される決算配当を、従前どおり当該事業年度の所得・税額計算に影響させることとされています。


特例制度による利益の配当等の損金算入


3 投資口の払戻しに係る手続等

 投資主の請求により投資口の払戻しをする旨の規約の定めがある投資法人(オープン・エンド型投資法人)は、解散をした場合など一定の場合を除き、その請求に応じて投資口の払戻しを行わねばなりません(投信法86①、124①)。

 また、投資口の払戻しは、投資法人の保有する資産の内容に照らして公正な金額によらなければならず、払戻金額の支払の時にその効力を生ずることとされています(投信法125①②)。

 なお、上記の「投資法人の保有する資産の内容に照らして公正な金額」については、一般社団法人投資信託協会が作成した「不動産投資信託及び不動産投資法人に関する規則」において、オープン・エンド型投資法人につき原則的な定めと、適格機関投資家向けの特例的な定めが置かれています。

 なお、当該投資法人規則は、金融庁監督局との事前調整の上で制定されているものです。


(1) 原則的な定め

イ 投資主の請求に基づき投資口の払戻しを行う場合は、投資主からの請求があった日の基準価額を用いて行うものとされ(投資法人規則48)、この基準価額とは、総資産額に保有資産の評価損益を加減した額から負債を控除した額(時価純資産価額)を投資口数で除して計算することとされています(投資法人規則36、47②)。

→ 投資主から請求のあった日の時価純資産価額により払戻しが行われます。

ロ この基準価額の算定は、原則として、各計算期間の末日及び中間計算期間の末日並びに投資主が投資法人に対して払戻の請求を直接行うことが可能となっている日及び当該日の前5営業日に行うこととされています(投資法人規則39、47⑥)。

→ 結果として、投資主は、基準価額の算定日(基準日)においてのみ、投資口の払戻しを請求できることとなります(実務的には、基準日前の一定期間を払戻請求の受付期間と定め、その期間内に受け付けたものを基準日に請求されたものとして取り扱われています。)。


(2) 適格機関投資家向けの特例

イ 適格機関投資家のみを相手方として取得勧誘を行い、かつ適格機関投資家以外の者に譲渡されるおそれの少ないものに該当する一定のオープン・エンド型の投資法人の投資口は、計算期間の末日に計上する減価償却費に相当する金額を限度として、投資元本の払戻しとして分配できるものとされています(投資法人規則47の2)。

→ 元本部分の一部払戻が可能とされています。

ロ この基準価額の算定は、計算期間の末日のみとすることができ(投資法人規則47の3)、これによった場合には、投資主から請求のあった日の直前の計算期間末日の基準価額を用いて払戻しを行うことができます(投資法人規則48②)。

→ この場合、投資主は、基準日以外の日であっても請求を行うことができますが、直近の基準日(過去の基準日)による基準価額によることとなります。




【照会要旨】

 投資法人には、ある一定の場合を除き、投資口の払戻請求に応じない旨の規約の定めがあるクローズド・エンド型の投資法人(投資法人規則3⑩)と投資主からの一部払戻請求に基づき投資口の一部払戻しをする旨の規約の定めがあるオープン・エンド型の投資法人(投資法人規則3⑧)があります。

 このオープン・エンド型の投資法人が投資口の払戻請求に応じた場合には、法人税法第24条第1項第6号《配当等の額とみなす金額》に規定する「出資の払戻し」に該当し、その払い戻した金銭の額が、資本金等の額のうち払戻しの対象となった投資法人の投資口に対応する部分の金額を超えるときは、その超える部分の金額が剰余金の配当とみなされることとなります(このみなされる金額を以下において「みなし配当」といいます。)。

 このみなし配当は、租税特別措置法第67条の15第1項《投資法人に係る課税の特例》に規定する「配当等の額」に含まれることとなりますが、このみなし配当はあくまで税務上配当とみなしているものにすぎませんので、期末配当のように各事業年度ごとに作成される金銭の分配に係る計算書に記載されるものではなく、投資口の払戻しを行った事業年度の損益計算書に反映されるものですから、当該各事業年度との対応関係が明らかではありません。

 つきましては、投資法人に係る課税の特例制度の適用に当たり、投資法人が行う投資口の払戻しに伴うみなし配当については、その払戻しの効力が生ずる日(払戻金額の支払の日)を含む事業年度に係るものとし、当該事業年度を適用事業年度(同項に規定する適用事業年度をいいます。以下同じです。)と取り扱ってよろしいでしょうか。


(注)投資法人に係る課税の特例制度(措法67の15)や特定同族会社の特別税率制度(法法67)などについては、事業年度後の株主総会等で決定される決算配当(期末配当)を当該事業年度の所得・税額計算に影響させるものとなります。


【回答要旨】

 照会の事実関係を前提とする限り、貴見のとおり取り扱って差し支えありません。


(理由)


 投資口の払戻しに伴うみなし配当については、次に掲げる事項からすれば、その払戻しの効力が生ずる日(払戻金額の支払の日)を含む事業年度に係るものとし、当該事業年度を適用事業年度と解して投資法人に係る課税の特例制度を適用することが相当です。


① 照会要旨にもあるとおり、期末配当は、当該各事業年度における金銭の分配に係る計算書に記載されており、その金銭の分配に係る計算書は、旧商法における利益処分計算書に類するようなものであって当該各事業年度における利益処分の内容を記載するものであるため、当該各事業年度との対応関係が明らかである。一方、投資口の払戻しに伴うみなし配当は、その金銭の分配に係る計算書に記載されず、投資口の払戻しを行った事業年度の損益計算書に反映されていることから当該各事業年度と対応させる根拠がないこと。

② 投資口の払戻しに伴うみなし配当は、時価評価により含み損益の精算をすることに加え、特定の事業年度の利益のみならず過去からの繰越利益をも精算するものであり、この点からも直近に終了した事業年度と対応させる根拠がない。

③ 投資口(資本)の払戻し等に伴い生じるみなし配当は、平成18年度税制改正前から特定の事業年度と対応させる税務処理は行われておらず、その効力発生日(払戻金額の支払の日)において税務処理が行われることとされており、投資法人の課税の特例制度においても、その効力発生日の属する事業年度に係るみなし配当と取り扱うこととなること。

④ 平成18年度税制改正後においても、みなし配当に係る考え方に変更はないことから、投資法人の課税の特例制度の適用における投資法人が行う投資口の払戻しに伴うみなし配当についても、平成18年度改正前と同様の取扱いとなること。

(参考)


1 投資法人に係る課税の特例制度

 投資法人が支払う金銭の分配(出資総額等の減少に伴う金銭の分配として法人税法施行規則第8条の4に定めるものを除きます。)の金額(法人税法第24条の規定により配当とみなされる金額を含みます。)で、一定の要件を満たす事業年度(適用事業年度)に係るものは、当該適用事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入されます(措法67の15①)。


2 配当と事業年度の対応関係

 会社法の制定により配当と事業年度との対応関係がなくなったことに伴い、平成18年度の税制改正において、それまでは事業年度終了後の株主総会等で決定される期末配当を当該事業年度末において利益積立金額から減算することとしていたものを、その決算配当の効力の生ずる日に減算することとされました(法令9①八、法規別表四など)。

 ただし、投資法人に係る課税の特例制度(措法67の15)や特定同族会社の特別税率制度(法法67)など、従前の期末配当の額が直接所得・税額計算に影響する制度については、従前の期末配当と同様に事業年度後の株主総会等で決定される決算配当を、従前どおり当該事業年度の所得・税額計算に影響させることとされています。


特例制度による利益の配当等の損金算入


3 投資口の払戻しに係る手続等

 投資主の請求により投資口の払戻しをする旨の規約の定めがある投資法人(オープン・エンド型投資法人)は、解散をした場合など一定の場合を除き、その請求に応じて投資口の払戻しを行わねばなりません(投信法86①、124①)。

 また、投資口の払戻しは、投資法人の保有する資産の内容に照らして公正な金額によらなければならず、払戻金額の支払の時にその効力を生ずることとされています(投信法125①②)。

 なお、上記の「投資法人の保有する資産の内容に照らして公正な金額」については、一般社団法人投資信託協会が作成した「不動産投資信託及び不動産投資法人に関する規則」において、オープン・エンド型投資法人につき原則的な定めと、適格機関投資家向けの特例的な定めが置かれています。

 なお、当該投資法人規則は、金融庁監督局との事前調整の上で制定されているものです。


(1) 原則的な定め

イ 投資主の請求に基づき投資口の払戻しを行う場合は、投資主からの請求があった日の基準価額を用いて行うものとされ(投資法人規則48)、この基準価額とは、総資産額に保有資産の評価損益を加減した額から負債を控除した額(時価純資産価額)を投資口数で除して計算することとされています(投資法人規則36、47②)。

→ 投資主から請求のあった日の時価純資産価額により払戻しが行われます。

ロ この基準価額の算定は、原則として、各計算期間の末日及び中間計算期間の末日並びに投資主が投資法人に対して払戻の請求を直接行うことが可能となっている日及び当該日の前5営業日に行うこととされています(投資法人規則39、47⑥)。

→ 結果として、投資主は、基準価額の算定日(基準日)においてのみ、投資口の払戻しを請求できることとなります(実務的には、基準日前の一定期間を払戻請求の受付期間と定め、その期間内に受け付けたものを基準日に請求されたものとして取り扱われています。)。


(2) 適格機関投資家向けの特例

イ 適格機関投資家のみを相手方として取得勧誘を行い、かつ適格機関投資家以外の者に譲渡されるおそれの少ないものに該当する一定のオープン・エンド型の投資法人の投資口は、計算期間の末日に計上する減価償却費に相当する金額を限度として、投資元本の払戻しとして分配できるものとされています(投資法人規則47の2)。

→ 元本部分の一部払戻が可能とされています。

ロ この基準価額の算定は、計算期間の末日のみとすることができ(投資法人規則47の3)、これによった場合には、投資主から請求のあった日の直前の計算期間末日の基準価額を用いて払戻しを行うことができます(投資法人規則48②)。

→ この場合、投資主は、基準日以外の日であっても請求を行うことができますが、直近の基準日(過去の基準日)による基準価額によることとなります。


国税庁ホームページ質疑応答事例法人税

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/26/05.htm

法人税法 質疑応答事例【その他損益】【売買とされるPFI事業について(法人税の取扱い)】

【結論】

【参考】のような契約を締結して行われるPFI事業について、その資産の契約形態が賃貸借であったとしても、その賃貸借の目的となる資産の引渡しの時にその資産の売買(リース取引の意義と照らして売買取引のリース取引に該当)があったものとされるとともに、民間事業者Aが一定の延払基準の方法により経理したときは、法人税法第63条第1項((リース譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度))の規定の適用ができる。


【参考】

1 事業の概要

 本事業は、民間事業者AがPFI法に基づき建設・所有するB館を、契約期間中(30年間)はC県に賃貸しながら、そのB館の維持管理の業務を受託するというものであります。

 なお、契約期間経過後には、民間事業者Aが有するB館の所有権をC県に対して無償で譲渡します。


[参考]

PFI : Private Finance Initiativeの略です。

PFI法 : 「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(平成11年7月30日法律第117号)」の略です。

PFI事業 : 公共施設等の整備等に関する事業であって、民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用することにより効率的かつ効果的に実施されるものをいいます(PFI法第2条第2項)。

2 サービスの対価の支払

 C県は、民間事業者Aに年2回・30年間払いによってサービスの対価を支払うこととしていますが、その対価のうち賃貸料相当額の部分については、本件工事費等及びこれに係る支払利息相当額が積算の基礎となっています。


3 運営と観覧料の徴収・管理

 B館は、民間事業者Aがその所有権を有しますが、対外的に「C県立B館」の名で運営されるとともに、C県は、B館の入館者から観覧料を徴収(実際の徴収事務は民間事業者Aに委託しますが、当日分の観覧料は県の出納員に引継ぎ)し管理します。


4 契約期間の中途における契約の終了

 契約期間の中途において、契約不履行等の一定の事実が生じた場合には、契約の終了があり得ますが、その場合であっても、C県はB館の所有権をすべて保持・取得した上で、契約終了時における本件工事費等の残額及びこれに係る支払利息相当額の合計額の90%ないし100%相当額を民間事業者Aに対して支払います。


売買とされるPFI事業について(法人税の取扱い)の概要図




【回答要旨】

(理由)


1 売買とされるリース取引

 法人が一定のリース取引を行った場合においては、そのリース資産の賃貸人から賃借人への引渡しの時にそのリース資産の売買があったものとして、賃貸人又は賃借人である法人の各事業年度の所得の金額を計算することとされています(法人税法第64条の2第1項)。

 また、上記の一定のリース取引とは、資産の賃貸借(所有権が移転しない土地の賃貸借などが除かれますが、建物の賃貸借は除かれません。)で、次の要件を満たすものとされています(法人税法第64条の2第3項)。


(1) その賃貸借に係る契約が、賃貸借期間の中途においてその解除をすることができないものであること又はこれに準ずるものであること。


(2) その賃貸借に係る賃借人がその賃貸借に係る資産からもたらされる経済的な利益を実質的に享受することができ、かつ、その資産の使用に伴って生ずる費用を実質的に負担すべきこととされているものであること。


2 本事業の要件判定

 本事業が上記1の「売買とされるリース取引」に該当するかどうかについては、次のとおりです。


(1) 資産の賃貸借であること

 本事業の民間事業者AとC県との間で締結された契約書の条項によれば、民間事業者Aは、B館について、本件引渡日から(30年後の)X年3月31日までの期間、C県に賃貸することとなっています。


(2) 解除をすることができないものに準ずるものであること

 対象となるリース取引の要件の一つに、その賃貸借に係る契約が、賃貸借期間の中途においてその解除をすることができないものに準ずるものであることが掲げられています。その一例として、「資産の賃貸借契約に解約禁止条項がない場合であって、賃借人が契約違反をした場合又は解約する場合において、賃借人が、当該賃貸借に係る賃貸借期間のうちの未経過期間に対応するリース料の額の合計額のおおむね全部(原則として100分の90以上)を支払うこととされているもの」があります(法人税基本通達12の5-1-1の(1))。

 本事業の契約書の条項によれば、契約期間の中途において、契約不履行等の一定の事実が生じた場合には、契約の終了があり得ますが、その場合であっても、C県はB館の所有権をすべて保持・取得した上で、契約終了時における本件工事費等の残額及びこれに係る支払利息相当額の合計額の90%ないし100%相当額を民間事業者Aに対して支払うこととなっています。


(3) 経済的利益の実質的な享受者であること

 対象となるリース取引の要件の一つに、その賃貸借に係る賃借人がその賃貸借に係る資産からもたらされる経済的な利益を実質的に享受することができることが掲げられています。

 本事業において、B館は、民間事業者Aがその所有権を有しますが、対外的に「C県立B館」の名で運営されるとともに、C県は、B館の入館者から観覧料を徴収(実際の徴収事務は民間事業者Aに委託しますが、当日分の観覧料は県の出納員に引継ぎ)し管理することとなっています(C県財務規則、条例)。


(4) 使用費用の実質的な負担者であること

 対象となるリース取引の要件の一つに、その賃貸借に係る賃借人がその資産の使用に伴って生ずる費用を実質的に負担すべきこととされているものであることが掲げられています。これについては、その賃貸借期間中に賃借人が支払うリース料の額の合計額が、賃貸人における賃貸借資産の取得価額及びその取引に係る付随費用(賃貸借資産の取得に要する資金の利子、固定資産税、保険料等その取引に関連して賃貸人が支出する費用をいう。)の額の合計額のおおむね全部(原則として100分の90以上)とされていることをいうと取り扱われています(法人税法施行令131の22、法人税基本通達12の5-1-2)。

 本事業の契約書の条項によれば、C県は、民間事業者Aに年2回・30年間払いによってサービスの対価を支払うこととしていますが、その対価のうち賃貸料相当額の部分については、本件工事費等及びこれに係る支払利息相当額が積算の基礎となっています。


3 法人税法第63条第1項((リース譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度))の規定

 内国法人が、1に掲げる一定のリース取引によるリース資産(そのリース取引の目的となる資産)の引渡しを行った場合において、その資産の販売等に係る収益の額及び費用の額につき、その資産の販売等に係る目的物の引渡しの日の属する事業年度以後の各事業年度の確定した決算において一定の延払基準の方法により経理したときは、その経理した収益の額及び費用の額は、その事業年度の所得の金額の計算上、益金の額及び損金の額に算入することとされています(法人税法第63条第1項、第2項)。


4 結論

 以上のことからすれば、本事業については、その資産の契約形態が賃貸借であったとしても、上記2のとおり、上記1の売買とされるリース取引に該当することから、その賃貸借の目的となる資産の引渡しの時にその資産の売買があったものとされるとともに(法人税法第64条の2)、民間事業者Aが一定の延払基準の方法により経理したときは、法人税法第63条第1項((リース譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度))の規定の適用ができると解されます。





【照会要旨】

 次のような契約を締結して行われるPFI事業については、その資産の契約形態が賃貸借であったとしても、その賃貸借の目的となる資産の引渡しの時にその資産の売買があったものとされるとともに(法人税法第64条の21)、民間事業者Aが一定の延払基準の方法により経理したときは、法人税法第63条第1項((リース譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度))の規定の適用ができると解して差し支えないでしょうか。


1 事業の概要

 本事業は、民間事業者AがPFI法に基づき建設・所有するB館を、契約期間中(30年間)はC県に賃貸しながら、そのB館の維持管理の業務を受託するというものであります。

 なお、契約期間経過後には、民間事業者Aが有するB館の所有権をC県に対して無償で譲渡します。


[参考]

PFI : Private Finance Initiativeの略です。

PFI法 : 「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(平成11年7月30日法律第117号)」の略です。

PFI事業 : 公共施設等の整備等に関する事業であって、民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用することにより効率的かつ効果的に実施されるものをいいます(PFI法第2条第2項)。

2 サービスの対価の支払

 C県は、民間事業者Aに年2回・30年間払いによってサービスの対価を支払うこととしていますが、その対価のうち賃貸料相当額の部分については、本件工事費等及びこれに係る支払利息相当額が積算の基礎となっています。


3 運営と観覧料の徴収・管理

 B館は、民間事業者Aがその所有権を有しますが、対外的に「C県立B館」の名で運営されるとともに、C県は、B館の入館者から観覧料を徴収(実際の徴収事務は民間事業者Aに委託しますが、当日分の観覧料は県の出納員に引継ぎ)し管理します。


4 契約期間の中途における契約の終了

 契約期間の中途において、契約不履行等の一定の事実が生じた場合には、契約の終了があり得ますが、その場合であっても、C県はB館の所有権をすべて保持・取得した上で、契約終了時における本件工事費等の残額及びこれに係る支払利息相当額の合計額の90%ないし100%相当額を民間事業者Aに対して支払います。


売買とされるPFI事業について(法人税の取扱い)の概要図



【回答要旨】

 照会の事実を前提とすれば、貴見のとおりで差し支えありません。


(理由)


1 売買とされるリース取引

 法人が一定のリース取引を行った場合においては、そのリース資産の賃貸人から賃借人への引渡しの時にそのリース資産の売買があったものとして、賃貸人又は賃借人である法人の各事業年度の所得の金額を計算することとされています(法人税法第64条の2第1項)。

 また、上記の一定のリース取引とは、資産の賃貸借(所有権が移転しない土地の賃貸借などが除かれますが、建物の賃貸借は除かれません。)で、次の要件を満たすものとされています(法人税法第64条の2第3項)。


(1) その賃貸借に係る契約が、賃貸借期間の中途においてその解除をすることができないものであること又はこれに準ずるものであること。


(2) その賃貸借に係る賃借人がその賃貸借に係る資産からもたらされる経済的な利益を実質的に享受することができ、かつ、その資産の使用に伴って生ずる費用を実質的に負担すべきこととされているものであること。


2 本事業の要件判定

 本事業が上記1の「売買とされるリース取引」に該当するかどうかについては、次のとおりです。


(1) 資産の賃貸借であること

 本事業の民間事業者AとC県との間で締結された契約書の条項によれば、民間事業者Aは、B館について、本件引渡日から(30年後の)X年3月31日までの期間、C県に賃貸することとなっています。


(2) 解除をすることができないものに準ずるものであること

 対象となるリース取引の要件の一つに、その賃貸借に係る契約が、賃貸借期間の中途においてその解除をすることができないものに準ずるものであることが掲げられています。その一例として、「資産の賃貸借契約に解約禁止条項がない場合であって、賃借人が契約違反をした場合又は解約する場合において、賃借人が、当該賃貸借に係る賃貸借期間のうちの未経過期間に対応するリース料の額の合計額のおおむね全部(原則として100分の90以上)を支払うこととされているもの」があります(法人税基本通達12の5-1-1の(1))。

 本事業の契約書の条項によれば、契約期間の中途において、契約不履行等の一定の事実が生じた場合には、契約の終了があり得ますが、その場合であっても、C県はB館の所有権をすべて保持・取得した上で、契約終了時における本件工事費等の残額及びこれに係る支払利息相当額の合計額の90%ないし100%相当額を民間事業者Aに対して支払うこととなっています。


(3) 経済的利益の実質的な享受者であること

 対象となるリース取引の要件の一つに、その賃貸借に係る賃借人がその賃貸借に係る資産からもたらされる経済的な利益を実質的に享受することができることが掲げられています。

 本事業において、B館は、民間事業者Aがその所有権を有しますが、対外的に「C県立B館」の名で運営されるとともに、C県は、B館の入館者から観覧料を徴収(実際の徴収事務は民間事業者Aに委託しますが、当日分の観覧料は県の出納員に引継ぎ)し管理することとなっています(C県財務規則、条例)。


(4) 使用費用の実質的な負担者であること

 対象となるリース取引の要件の一つに、その賃貸借に係る賃借人がその資産の使用に伴って生ずる費用を実質的に負担すべきこととされているものであることが掲げられています。これについては、その賃貸借期間中に賃借人が支払うリース料の額の合計額が、賃貸人における賃貸借資産の取得価額及びその取引に係る付随費用(賃貸借資産の取得に要する資金の利子、固定資産税、保険料等その取引に関連して賃貸人が支出する費用をいう。)の額の合計額のおおむね全部(原則として100分の90以上)とされていることをいうと取り扱われています(法人税法施行令131の22、法人税基本通達12の5-1-2)。

 本事業の契約書の条項によれば、C県は、民間事業者Aに年2回・30年間払いによってサービスの対価を支払うこととしていますが、その対価のうち賃貸料相当額の部分については、本件工事費等及びこれに係る支払利息相当額が積算の基礎となっています。


3 法人税法第63条第1項((リース譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度))の規定

 内国法人が、1に掲げる一定のリース取引によるリース資産(そのリース取引の目的となる資産)の引渡しを行った場合において、その資産の販売等に係る収益の額及び費用の額につき、その資産の販売等に係る目的物の引渡しの日の属する事業年度以後の各事業年度の確定した決算において一定の延払基準の方法により経理したときは、その経理した収益の額及び費用の額は、その事業年度の所得の金額の計算上、益金の額及び損金の額に算入することとされています(法人税法第63条第1項、第2項)。


4 結論

 以上のことからすれば、本事業については、その資産の契約形態が賃貸借であったとしても、上記2のとおり、上記1の売買とされるリース取引に該当することから、その賃貸借の目的となる資産の引渡しの時にその資産の売買があったものとされるとともに(法人税法第64条の2)、民間事業者Aが一定の延払基準の方法により経理したときは、法人税法第63条第1項((リース譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度))の規定の適用ができると解されます。


国税庁ホームページ質疑応答事例法人税

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/26/03.htm

法人税法 質疑応答事例【その他損益】【収用事業の施行に伴い残地上の施設の撤去新設をした場合の取扱い】

【結論】

A石油((株)当社)が有するガソリンスタンドの敷地の一部が道路用地として収用され、これに伴い、残地内において既存の給油施設を取り壊し、位置を動かして同一機能の給油施設を新設する工事が必要となり、起業者から新設工事費用に充てるための補償金を取得した場合について。


収用等に伴う地域外の既存設備の付替え等に要する経費の補償金の取扱い(租税特別措置法関係通達(法人税編)64(2)-12の2)に準じ、補償金の全額を新設する給油施設(同種の資産)の取得に充てている場合には、当該補償金の額から従来の給油施設の取壊し損失の額を控除した残額の範囲内で、損金経理により帳簿価額を減額することが認められます。


(注) 従来の給油施設の取壊し損失の額は、従来の給油施設の帳簿価額からその処分(見込)価額を控除して計算します。



【参考】

買収されない部分の土地の上に存する施設の取壊し補償金は、対価補償金には当たりませんから、これについて収用等の場合の課税の特例の適用はありません。

 しかし、当該給油施設の取壊し及び新設は公共事業の施工に伴って不可避的に生じたものであり、かつ、新設する給油施設は従来の給油施設と機能的にも同一であって、A石油(株)に積極的な利益が生じたとは認められないことに顧み、収用等に伴う地域外の既存設備の付替え等に要する経費の補償金の取扱い(租税特別措置法関係通達(法人税編)64(2)-12の2)に準じ、本件の補償金の全額を新設する給油施設の取得に充てている場合には、新設する給油施設につき当該補償金の額から従来の給油施設の取壊し損失の額を控除した残額の範囲内で、損金経理により帳簿価額を減額することが認められます。


(注) 従来の給油施設の取壊し損失の額は、従来の給油施設の帳簿価額からその処分(見込)価額を控除して計算します。


【地域外の既存設備の付替え等に要する経費の補償金】

64(2)-12の2 法人の有する土地等又は当該土地等の隣接地について収用等があったことに伴い、当該法人の有する建物、構築物、機械及び装置その他の工作物で収用等に係る土地以外の土地の上に存するもの(以下「地域外の既存設備」という。)を従来どおり事業の用に供することが著しく困難となったため、これに代えて資産の取得をし、又は資産の改良を行うための経費に充てるものとして交付を受ける補償金は対価補償金には該当しないのであるが、当該法人が当該補償金の全部又は一部をもって補償の目的に適合した同種の資産の取得又は資産の改良を行った場合には、次の場合に応じ、それぞれ次により取り扱うことができるものとする。

 起業者から金銭以外の資産の交付を受け、又は起業者によって当該法人の有する資産について改良が行われた場合も、同様とする。(昭51年直法2-39「26」により追加、平6年課法2-5「三十六」により改正)


(1) 当該地域外の既存設備について修理又は改良を行った場合 当該修理又は改良に要した金額が資本的支出と認められるものであっても、法人が当該要した金額のうち当該補償金の額に相当する金額以下の金額を修繕費として損金経理をしたときは、その計算を認める。


(2) 当該地域外の既存設備に代えて同種の資産を取得した場合 法人が当該補償金の額のうち当該資産の取得に充てた部分の金額に次の算式の割合を乗じて計算した金額以下の金額をその取得価額に算入しないで損金経理をしたときは、これを認める。





地域外の既存設備の付替え等に要する経費の補償金の算式


(注) 当該地域外の既存設備の取壊し等に要する費用の額が、当該費用に充てるために交付を受ける金額を超える場合には、上記の算式中の「当該補償金の額」は、その「当該補償金の額」からその超える部分の金額を控除したところによる。



【照会要旨】

 A石油(株)が有するガソリンスタンドの敷地の一部が道路用地として収用され、これに伴い、残地内において既存の給油施設を取り壊し、位置を動かして同一機能の給油施設を新設する工事が必要となりました。

 これについて、起業者から新設工事費用に充てるための補償金を取得しましたが、対価補償金として収用等の場合の課税の特例の適用が認められますか。


【回答要旨】

 買収されない部分の土地の上に存する施設の取壊し補償金は、対価補償金には当たりませんから、これについて収用等の場合の課税の特例の適用はありません。

 しかし、当該給油施設の取壊し及び新設は公共事業の施工に伴って不可避的に生じたものであり、かつ、新設する給油施設は従来の給油施設と機能的にも同一であって、A石油(株)に積極的な利益が生じたとは認められないことに顧み、収用等に伴う地域外の既存設備の付替え等に要する経費の補償金の取扱い(租税特別措置法関係通達(法人税編)64(2)-12の2)に準じ、本件の補償金の全額を新設する給油施設の取得に充てている場合には、新設する給油施設につき当該補償金の額から従来の給油施設の取壊し損失の額を控除した残額の範囲内で、損金経理により帳簿価額を減額することが認められます。


(注) 従来の給油施設の取壊し損失の額は、従来の給油施設の帳簿価額からその処分(見込)価額を控除して計算します。


国税庁ホームページ質疑応答事例法人税

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/26/01.htm