税理士試験法人税法受験生のブログ

法人税法、質疑応答事例等のまとめをしてます。

法人税法 質疑応答事例【費用】【社会保険料の損金算入時期について】

【結論】当社(2月20日決算)は、期末の2月20日時点で、当月分の社会保険料の実額が明らかでないことから2月1日から決算期末日である2月20日に係る社会保険料の額{(2月1日~2月28日)で納付額が明らかとなる}を1月分(前月)の納付実額を基礎として計算し、毎期継続的に見積計上し、翌期に洗替調整する処理をしている場合の社会保険料の見積額の損金算入について。


前月等の納付実績を基礎として合理的に見積もったとしても、法人が、前月(1月)の実績を基礎として計算した見積額を当月の20日分(2月1日~2月20日)に係る社会保険料の額として損金の額に算入することは認められない。



【参考】

法人税法上、当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額とされています(法人税法第22条第3項第2号)。

 そして、法人が負担する社会保険料の額については、当該保険料の額の計算の対象となった月の末日の属する事業年度において損金の額に算入することができることとされていますが(法人税基本通達9-3-2)、これは、法人が負担する社会保険料は、被保険者が月末において在職している場合には、同者に係る保険料を翌月末日までに納付することとなり、被保険者が月の中途で退職した場合には、同者の退職月に係る保険料は納付する義務はない(健康保険法第156条第3項、厚生年金保険法第81条及び第19条第1項)ことによるものです。

 したがって、法人の負担する各月の社会保険料の支払債務は当該月の末日における従業員の在職の事実をもって確定することになり、これを本件に当てはめると、2月分の社会保険料の支払債務が確定するのは2月の末日となりますから、法人が、前月(1月)の実績を基礎として計算した見積額を当月の20日分(2月1日~2月20日)に係る社会保険料の額として損金の額に算入することは認められません。



【照会要旨】

 A(株)(2月20日決算)は、A(株)の負担すべき社会保険料の額について、期末の2月20日時点では、当月分の社会保険料の実額が明らかでないことから2月1日から決算期末日である2月20日に係る社会保険料の額を見積額で計算し、継続的に法定福利費(販売費及び一般管理費として原価外処理)として当該事業年度の損金の額に算入することを予定しています。

 具体的には、1月分の納付実額を基礎にこれを日数あん分(2/3)した金額を2月1日から2月20日に係る社会保険料の額として損金計上し、翌期に2月分の納入告知書が発行されて2月分(2月1日~2月28日分)の納付額が明らかとなった時点(3月)で前期末の見積計上額を洗替処理により調整する予定です。

 法人税基本通達9-3-2((社会保険料の損金算入の時期))では、社会保険料は当該保険料の額の計算の対象となった月の末日(本件の場合には2月末日)の属する事業年度の損金の額に算入することができることとされていますが、本件のように毎期継続的に見積計上し、翌期に調整する処理をしている場合には、社会保険料の見積額を当該事業年度の損金の額に算入しても差し支えありませんか。


【回答要旨】

 法人が負担すべき社会保険料の額で月末の到来しない月に係るものについては、前月等の納付実績を基礎として合理的に見積もったとしても、当該見積額を損金の額に算入することは認められません。

 したがって、法人の事業年度の末日が月末でない法人については、当該末日を含む月の社会保険料の額については当該事業年度の損金の額に算入することはできないことになります。


(理由)

 法人税法上、当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額とされています(法人税法第22条第3項第2号)。

 そして、法人が負担する社会保険料の額については、当該保険料の額の計算の対象となった月の末日の属する事業年度において損金の額に算入することができることとされていますが(法人税基本通達9-3-2)、これは、法人が負担する社会保険料は、被保険者が月末において在職している場合には、同者に係る保険料を翌月末日までに納付することとなり、被保険者が月の中途で退職した場合には、同者の退職月に係る保険料は納付する義務はない(健康保険法第156条第3項、厚生年金保険法第81条及び第19条第1項)ことによるものです。

 したがって、法人の負担する各月の社会保険料の支払債務は当該月の末日における従業員の在職の事実をもって確定することになり、これを本件に当てはめると、2月分の社会保険料の支払債務が確定するのは2月の末日となりますから、法人が、前月(1月)の実績を基礎として計算した見積額を当月の20日分(2月1日~2月20日)に係る社会保険料の額として損金の額に算入することは認められません。


国税庁ホームページ質疑応答事例法人税

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/02/02.htm

法人税法 質疑応答事例【費用】【短期の損害保険契約に係る保険料を分割で支払った場合の税務上の取扱い】

【結論】法人(年1回7月決算)が、20X1年7月20日に損害保険契約(保険期間:20X1年7月20日~20X2年7月19日)を締結し、保険料5,000千円を10回の分割払とし、契約日に第1回分として500千円を支払った場合。

当該契約日の属する事業年度において、支払った500千円は損金に算入され(又は164,383円(図の算式①))、未払の4,500千円は損金の額に算入することは出来ない。


【参考】

第1回分の保険料500千円については、継続適用を要件として次の方法のうちいずれかを採用できます。


短期の損害保険契約に係る保険料を分割で支払った場合の税務上の取扱いの図



(理由)


1 損害保険契約にあってはその契約を締結しただけでは債務が確定したということはできず、保険期間の経過に従って債務が確定すると考えられること。


2 法人税基本通達2-2-14((短期の前払費用))は、当該事業年度に支出した費用のうちまだ役務の提供を受けていない部分についての取扱いを定めたものであり、当該事業年度に支出していない費用のうちまだ役務の提供を受けていない部分の金額の損金計上まで認める趣旨ではないこと(したがって、未払の4,500千円を損金の額に算入することはできません。)。




【照会要旨】

 法人(年1回7月決算)が、20X1年7月20日に損害保険契約(保険期間:20X1年7月20日~20X2年7月19日)を締結し、保険料5,000千円を10回の分割払とし、契約日に第1回分として500千円を支払った場合に、当該契約日の属する事業年度において、保険料の全額(5,000千円)を損金に計上できますか。


【回答要旨】

 保険料の全額を契約日の属する事業年度において損金に計上することはできません。

 なお、当該事業年度に支払った第1回分の保険料500千円については、継続適用を要件として次の方法のうちいずれかを採用できます。


短期の損害保険契約に係る保険料を分割で支払った場合の税務上の取扱いの図



(理由)


1 損害保険契約にあってはその契約を締結しただけでは債務が確定したということはできず、保険期間の経過に従って債務が確定すると考えられること。


2 法人税基本通達2-2-14((短期の前払費用))は、当該事業年度に支出した費用のうちまだ役務の提供を受けていない部分についての取扱いを定めたものであり、当該事業年度に支出していない費用のうちまだ役務の提供を受けていない部分の金額の損金計上まで認める趣旨ではないこと(したがって、未払の4,500千円を損金の額に算入することはできません。)。


国税庁ホームページ質疑応答事例法人税

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/02/01.htm

法人税法 質疑応答事例【収益】【ゴルフ会員権の販売に伴い受領する入会金の収益計上時期】

【結論】当社は企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」に基づき、ゴルフ会員入会金について会員にビジターと比較して低廉な料金でゴルフ場を利用させるという将来の役務に対する対価として、会員権の平均的な存続期間にわたり収益を認識することとしていますが、法人税法上も同様に取り扱って差し支えありませんか?

※本件会員権の資格に有効期限の定めはありません。また、所定の手続を経て譲渡及び相続が可能であり、その存続期間は半永久的なものです


【回答】

本件入会金は、その有効期限の定めがなく、存続期間も半永久的とのことですので、契約の特定期間における役務の提供ごとにそれと具体的な対応関係をもって発生するものとは認められません。

そのため法人税法上、収益認識基準と同様には取り扱われず、取引開始の日、すなわち会員契約締結日の属する事業年度において、入会金は一括して益金の額に算入することとなります。



ただし、返金が不要な支払を受ける場合であっても、契約の特定期間における役務の提供ごとに、それと具体的な対応関係をもって発生する対価の前受けと認められる場合において、その支払を当該役務の提供の対価として、継続して当該特定期間の経過に応じてその収益の額を益金の額に算入しているときは、これを認めることとされています。




【参考】

 以上を踏まえると、返金が不要な支払を受ける場合には、それが収益認識基準において将来の財又はサービスの提供時に収益を認識すべきとされるものであっても、法人税法上は、契約の特定期間における役務の提供ごとにそれと具体的な対応関係をもって発生する対価の前受けと認められない限り、その取引の開始の日の属する事業年度の益金の額に算入することとなります。

本件入会金は、その有効期限の定めがなく、存続期間も半永久的とのことですので、契約の特定期間における役務の提供ごとにそれと具体的な対応関係をもって発生するものとは認められません。


(注)(本件会員権の内容)


1 本件クラブの入会希望者は、当社に対し所定の「入会申込書」を提出し、理事会の審査承認を受け本件入会金を納入し、会員契約を締結することにより会員資格を取得します。


2 本件会員権の資格に有効期限の定めはありません。また、所定の手続を経て譲渡及び相続が可能であり、その存続期間は半永久的なものです。


3 入会希望者から受領した本件入会金は、いかなる理由があっても返還しません。


4 会員は、本件クラブの休業日を除く全ての日の開場時間内に優先的にゴルフ場を利用することができ、非会員と比べ低廉な料金でプレーすることが可能であるほか、本件クラブが発行する機関誌の配付を受けるなどの権利を有することとなります。


【照会要旨】

 当社は、Aカントリークラブという名称のゴルフ場(以下「本件クラブ」といいます。)を運営している法人で、今般、プレー権のみを内容とする新たなゴルフ会員権(以下「本件会員権」といいます。)を発行し、一口150万円の入会金(以下「本件入会金」といいます。)で販売することを予定しております。

 当社は、企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」(以下「収益認識基準」といいます。)に基づき、本件入会金については、会員にビジターと比較して低廉な料金でゴルフ場を利用させるという将来の役務に対する対価として、会員権の平均的な存続期間にわたり収益を認識することとしていますが、法人税法上も同様に取り扱って差し支えありませんか。

 また、本件会員権の権利の内容は要旨次のとおりです。


(本件会員権の内容)


1 本件クラブの入会希望者は、当社に対し所定の「入会申込書」を提出し、理事会の審査承認を受け本件入会金を納入し、会員契約を締結することにより会員資格を取得します。


2 本件会員権の資格に有効期限の定めはありません。また、所定の手続を経て譲渡及び相続が可能であり、その存続期間は半永久的なものです。


3 入会希望者から受領した本件入会金は、いかなる理由があっても返還しません。


4 会員は、本件クラブの休業日を除く全ての日の開場時間内に優先的にゴルフ場を利用することができ、非会員と比べ低廉な料金でプレーすることが可能であるほか、本件クラブが発行する機関誌の配付を受けるなどの権利を有することとなります。


【回答要旨】

 本件会員権の販売に係る収益の額は、法人税法上、収益認識基準と同様には取り扱われず、取引開始の日、すなわち会員契約締結日の属する事業年度において一括して益金の額に算入することとなります。


(理由)

 法人が返金不要の支払を受ける場合には、その支払が約束した財又はサービスの移転を生じさせるものか、あるいは将来の財又はサービスの移転に対するものかどうかを判断し、約束した財又はサービスの移転を生じさせるものでない場合には、将来の財又はサービスを提供する時に収益を認識することとされています(企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」57、58)。

 一方、法人税においては、法人が、内国法人の資産の販売若しくは譲渡又は役務の提供(以下「資産の販売等」といいます。)に係る収益の額は、別段の定めがあるものを除き、その資産の販売等に係る目的物の引渡し又は役務の提供の日の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入することとされており(法法22の21)、資産の販売等に係る取引を開始するに際して、相手方から中途解約のいかんにかかわらず取引の開始当初から返金が不要な支払を受ける場合には、原則として取引開始の日の属する事業年度の益金の額に算入することとされています(法基通2-1-40の2)。これは、対価の支払が施設利用などの権利を主とする契約上の地位を付与することに基づくものであるならば、税務上は、こうした契約上の地位の設定を一の取引の単位として、当該地位設定の日の属する事業年度に収益計上するという考え方によるものです。

 ただし、返金が不要な支払を受ける場合であっても、契約の特定期間における役務の提供ごとに、それと具体的な対応関係をもって発生する対価の前受けと認められる場合において、その支払を当該役務の提供の対価として、継続して当該特定期間の経過に応じてその収益の額を益金の額に算入しているときは、これを認めることとされています。

 以上を踏まえると、返金が不要な支払を受ける場合には、それが収益認識基準において将来の財又はサービスの提供時に収益を認識すべきとされるものであっても、法人税法上は、契約の特定期間における役務の提供ごとにそれと具体的な対応関係をもって発生する対価の前受けと認められない限り、その取引の開始の日の属する事業年度の益金の額に算入することとなります。

 本件入会金は、その有効期限の定めがなく、存続期間も半永久的とのことですので、契約の特定期間における役務の提供ごとにそれと具体的な対応関係をもって発生するものとは認められません。

 そうすると、上記のとおり、本件入会金が収益認識基準において将来の役務提供時に収益を認識すべきとされるものであっても、法人税法上はその取引の開始の日の属する事業年度の益金の額に算入することとなります。

 したがって、本件会員権の販売に係る収益の額は、その取引開始日である会員契約締結日の属する事業年度において一括して益金の額に算入することとなります。


国税庁ホームページ質疑応答事例法人税

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/01/07.htm