税理士試験法人税法受験生のブログ

法人税法、質疑応答事例等のまとめをしてます。

法人税法 質疑応答事例【グループ通算制度の開始に当たり、過去に特別償却の適用を受けた減価償却資産を有する場合の時価評価損益について 】

【結論】当社は、当社を親法人(通算承認を受けた後は通算親法人)とするグループ通算制度で通算開始前子法人が、通算開始直前事業年度終了の時において、過去に特別償却の適用を受けたことのある次の減価償却資産を保有している場合にも時価評価をする必要がある。


①通算開始前子法人は通算制度の承認の効力が生じた後に通算親法人となる当社との間に当社による完全支配関係が継続することが見込まれていないため資産の時価評価損益の計上を要しない法人に該当しないこと。


②減価償却資産は、時価評価損益の計上を要しないこととなる資産の帳簿価額が1,000万円に満たない場合の資産等に該当しないこと。



よって、時価と特別償却後の帳簿価額(未償却残高)との差を、通算開始直前事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入する。



【参考】

時価評価資産の対象から除かれる減価償却資産は、法人税法施行令第131条の15第1項第1号に限定列挙されているところ(注)、過去に特別償却の適用を受けた減価償却資産は掲げられていない。


(注)そのうち、減価償却資産については、通算制度の適用を受けようとする最初の事業年度開始の日の5年前の日以後に終了する事業年度において1国庫補助金等の圧縮記帳、2工事負担金の圧縮記帳、3非出資組合に係る賦課金の圧縮記帳、4保険金等の圧縮記帳、5転廃業助成金等に係る課税の特例の規定の適用を受けたものなどは時価評価資産から除くこととされています。





【照会要旨】

 当社は、当社を親法人(通算承認を受けた後は通算親法人)とするグループ通算制度の適用を受けることを予定しています。

 グループ通算制度を開始する場合、通算親法人となる法人及び通算子法人となる法人(以下「通算開始前子法人」といいます。)が通算開始直前事業年度終了の時に有する時価評価資産の評価益の額又は評価損の額は、通算開始直前事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入することとされていますが(法法64の11)、通算開始前子法人が、通算開始直前事業年度終了の時において、過去に特別償却の適用を受けたことのある次の減価償却資産を保有している場合にも時価評価をする必要がありますか。

 なお、その通算開始前子法人は通算制度の承認の効力が生じた後に通算親法人となる当社との間に当社による完全支配関係が継続することが見込まれていないため資産の時価評価損益の計上を要しない法人に該当しないこと(法法64の111二、法令131の154)、また、次の減価償却資産は、時価評価損益の計上を要しないこととなる資産の帳簿価額が1,000万円に満たない場合の資産等に該当しないこと(法法64の111、法令131の151四、五)を前提とします。



【回答要旨】

 過去に特別償却の適用を受けたことのある減価償却資産についても時価評価する必要があります。

 すなわち、時価90とその帳簿価額60との差額30が評価益となります。


※取得価額100、減価償却累計額40(うち普通償却10、特別償却30)、未償却残高60(減価償却超過額なし)、時価90


(理由)

1 グループ通算制度を開始する場合には、通算親法人となる法人及び通算開始前子法人が通算開始直前事業年度終了の時に有する時価評価資産の評価益の額(その時の価額がその時の帳簿価額を超える場合のその超える部分の金額)又は評価損の額(その時の帳簿価額がその時の価額を超える場合のその超える部分の金額)は、その通算開始直前事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入することとされています(法法64の111)。

 この場合の時価評価資産とは、固定資産、土地(土地の上に存する権利を含み、固定資産に該当するものを除きます。)、有価証券、金銭債権及び繰延資産で一定のものをいうこととされ(法法64の111)、そのうち、減価償却資産については、通算制度の適用を受けようとする最初の事業年度開始の日の5年前の日以後に終了する事業年度において1国庫補助金等の圧縮記帳(法法42、44)、2工事負担金の圧縮記帳(法法45)、3非出資組合に係る賦課金の圧縮記帳(法法46)、4保険金等の圧縮記帳(法法47、49)、5転廃業助成金等に係る課税の特例(措法67の4)の規定の適用を受けたものなどは時価評価資産から除くこととされています(法令131の151一)。


2 上記のとおり、減価償却資産は原則として時価評価資産に該当し、その評価損益は、通算開始直前事業年度終了の時の価額(時価)とその時の帳簿価額との差額によって認識されますので、特別償却の適用を受けた減価償却資産を時価評価する場合には、その時価と特別償却適用後の帳簿価額によって時価評価損益を認識することとなります。

 また、時価評価資産の対象から除かれる減価償却資産は、法人税法施行令第131条の15第1項第1号に限定列挙されているところ、過去に特別償却の適用を受けた減価償却資産は掲げられていません。

 したがって、通算開始前子法人が通算開始直前事業年度終了の時に、過去に特別償却の適用を受けた減価償却資産を有する場合には、その減価償却資産についても時価評価する必要があります。



国税庁ホームページ質疑応答事例法人税

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/36/02.htm

法人税法 質疑応答事例【株式交換により取得した株式の所得税額控除(法法68)の計算における所有期間の取扱い】

【結論】甲社(3月決算)は00年10月1日にグループ法人A社の発行済株式を他のグループ法人B社から株式交換により取得し、00年4月1日から01年3月31日の1年間をその配当等の計算の基礎としている。

この場合の取得したA社株式に対する剰余金の配当を01年6月に受け、甲社は02年3月期の申告において、この剰余金の配当に課された所得税につき、法人税額から控除する所得税額の計算の月数按分について。


法人B社が所有していた期間を甲社が所有していた期間とみなすことはできませんので、甲社が所有していた期間に基づき、控除する所得税の額の計算を行うこととなります。


分子6ヶ月、分母12ヶ月。

(分子00年10月1日から01年3月31日、分母00年4月1日から01年3月31日)






参考:

①適格合併等により利子配当等の元本の移転を受けたときは、被合併法人等がその元本を所有していた期間は合併法人等の所有期間に含める ❨全額控除❩。


②株式移転により設立された株式移転完全親法人が当該株式移転に係る株式移転完全子法人からその設立の日後最初に支払われる剰余金の配当(株式移転後の初回配当)を受けるときは、その株式移転後の初回配当の計算の基礎となった期間の開始の日からその設立の日の前日まで全元本を所有していたものとみなすといった措置が講じられている ❨全額控除❩。



算式:所得税額×分母の所有期間のうち元本所有期間の月数/利子配当等の計算期間の月数=控除する所得税の額


【照会要旨】

 甲社(3月決算)は、X年10月1日にグループ法人A社の発行済株式を他のグループ法人B社から株式交換により取得し、(X+1)年6月にA社株式に対する剰余金の配当を受けました。なお、この剰余金の配当は、X年4月1日からX+1年3月31日の1年間をその計算の基礎としています。

 ところで、甲社は、X+2年3月期の申告において、この剰余金の配当につき課された所得税について法人税法第68条《所得税額の控除》の規定を適用する予定ですが、法人税額から控除する所得税額の計算に当たり、株式交換により取得したA社株式(配当等の元本)については、他のグループ法人B社が所有していた期間についても甲社が所有していた期間とみなして同条を適用することができると解して差し支えありませんか。

 なお、甲社、A社及びB社は、連結納税制度の適用を受ける法人ではありません。



【回答要旨】

 他のグループ法人B社が所有していた期間について甲社が所有していたものとみなすことはできません。


(理由)


1 法人が各事業年度において利子配当等の支払につき課された所得税の額は、その事業年度の所得に対する法人税額から控除することができるとされており(法法68)、この控除する所得税の額は、その元本の所有期間に対応する額、すなわち、課された所得税の額のうち、その計算期間の月数のうちにその元本を所有していた期間の月数の占める割合を乗じて得た金額とするのが原則です(法令140の212)。

 

2 「元本所有期間」については、1適格合併等により利子配当等の元本の移転を受けたときは、被合併法人等がその元本を所有していた期間は合併法人等の所有期間に含める、また、2株式移転により設立された株式移転完全親法人が当該株式移転に係る株式移転完全子法人からその設立の日後最初に支払われる剰余金の配当(株式移転後の初回配当)を受けるときは、その株式移転後の初回配当の計算の基礎となった期間の開始の日からその設立の日の前日まで全元本を所有していたものとみなすといった措置が講じられています。

3 他方、株式交換により他の法人の株式を取得した株式交換完全親法人が当該株式交換完全子法人からその株式交換後最初に支払われる剰余金の配当(株式交換後の初回配当)については、他の法人が所有していた期間を株式交換完全親法人が所有していたとみなすといった規定はありません。

4 したがって、甲社は、株式交換により取得したA社株式について、他のグループ法人B社が所有していた期間を甲社が所有していた期間とみなすことはできませんので、甲社が所有していた期間に基づき、控除する所得税の額の計算を行うこととなります。


国税庁ホームページ質疑応答事例法人税

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/23/06.htm

法人税法 質疑応答事例【分割を2回行った場合の給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除(租税特別措置法第42条の12の5)における比較雇用者給与等支給額の計算について 】

【結論】中小企業者である当社(3月決算)が、給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除(賃上げ)の適用を受ける場合で、前期及び当期に当社を分割法人とする2回の分割をしており、前期の10月1日と当期の4月1日にそれぞれ従業員の20人(給与等支給額は1人当たり1か月10万円)を移転した場合の比較雇用者給与等支給額の算定。


10,800万円(注1)−1,200万円{注2(分割1回目の金額)}−2,400万円{注3(分割2回目の金額)}=7,200万円が比較雇用者給与等支給額となります。



(注1)

前事業年度における従業員に対する給与等支給額は

10,800万円(次の(1)及び(2)の合計)です。


(1) 前事業年度開始の日(前期年4月1日)から分割の日の前日(前期年9月末)まで

 

 6,000万円(10万円×100人×6か月)


(2) 分割の日(前期年10月1日)から前事業年度終了の日(前期年3月末)まで

  

 4,800万円(10万円×80人×6か月)



(注2)

1回目の分割により控除する金額(移転した従業員20人分)

前期4月1日から9月30日(分割の前日までを事業年度とする為)

1,200万円(6,000万円×20人/100人)


(注3)

2回目の分割により控除する金額(移転した従業員20人分)

前期10月1日から3月31日まで2,400万円(9,600万円×20人/80人×12か月/12か月)



【簡略計算】

(注2)10万円×20人×6ヶ月=1,200万円

(注3)10万円×20人×12ヶ月=2,400万円



【照会要旨】

 当社(3月決算法人)は、×2年3月期に、租税特別措置法第42条の12の5≪給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除≫第2項(以下「本制度」といいます。)の適用を検討しています。

 当社は、前期及び当期に当社を分割法人とする2回の分割(以下、前期の分割を「本件分割1」、当期の分割を「本件分割2」といいます。)を行っており、これらの分割に伴い、従業員(国内雇用者)がそれぞれ移転しています。この場合、当社における比較雇用者給与等支給額の金額はいくらになりますか。


(事実関係)


1 当社は、租税特別措置法第42条の4第19項第7号に規定する中小企業者に該当します(同項第8号に規定する適用除外事業者には該当しません。)。また、当社の前期及び当期の月数はいずれも12か月です。

2 ×0年10月1日に本件分割1を、また、×1年4月1日に本件分割2を行っており、それぞれ従業員が20人ずつ移転しています。

3 当社の×0年4月1日における従業員数は100人であり、前期において、本件分割1による移転以外に従業員数の増減はありません。また、給与等支給額は1人当たり1か月10万円です。

4 前事業年度における従業員に対する給与等支給額は、10,800万円(次の(1)及び(2)の合計)です。

(1) 前事業年度開始の日(×0年4月1日)から本件分割1の日の前日(×0年9月末)まで

  6,000万円(10万円×100人×6か月)

(2) 本件分割1の日(×0年10月1日)から前事業年度終了の日(×1年3月末)まで

   4,800万円(10万円×80人×6か月)



【回答要旨】

 貴社の比較雇用者給与等支給額は7,200万円となります。


(理由)


1 本制度の適用においては、「雇用者給与等支給額からその比較雇用者給与等支給額を控除した金額の当該比較雇用者給与等支給額に対する割合(・・・)が1.5%以上であること」が要件の1つとされています(措法42の12の52)。

 そして、雇用者給与等支給額とは、法人の適用年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者(注)に対する給与等の支給額をいい(措法42の12の53九)、また、比較雇用者給与等支給額とは、前事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額をいうこととされています(措法42の12の53十)。

(注) 法人の使用人のうちその法人の有する国内に所在する事業所につき作成された労働基準法第108条に規定する賃金台帳に記載された者をいうこととされています(措法42の12の53二、措令27の12の56)。

2 また、本制度の適用を受けようとする法人が分割法人に該当する場合には、適用年度の分割法人の比較雇用者給与等支給額の計算における給与等支給額から、次の(1)及び(2)の分割の区分に応じてそれぞれに定める金額を控除することとされています(措令27の12の514一20)。

(1) 適用年度において行われた分割

  分割法人の前事業年度に係る移転給与等支給額に分割の日から適用年度終了の日までの期間の月数を乗じてこれをその適用年度の月数で除して計算した金額

(2) 前事業年度において行われた分割

  分割法人の前事業年度に係る移転給与等支給額

3 この移転給与等支給額とは、分割法人の分割の日前に開始した事業年度に係る給与等支給額(分割の日を含む事業年度にあっては、その分割の日の前日を事業年度終了の日とした場合に損金の額に算入される給与等支給額)にその分割の直後の分割承継法人の国内雇用者(分割の直前において分割法人の国内雇用者であった者に限ります。)の数を乗じて、これを分割の直前の分割法人の国内雇用者の数で除して計算した金額とされています(措令27の12の4の21620)。

4 本件においては、分割を前期と当期に行っているため、上記2のとおり、当社の比較雇用者給与等支給額に係る給与等支給額から、次の(1)及び(2)の移転給与等支給額をそれぞれ控除することとなります。

(1) 本件分割1により当社の比較雇用者給与等支給額に係る給与等支給額から控除する移転給与等支給額

 本件分割1は、前事業年度において行われているため、上記2(2)の金額を控除することになります。本件分割1の日(×0年10月1日)の前日(×0年9月末)を事業年度終了の日とした場合に損金の額に算入される給与等支給額は、6,000万円であるため、上記3のとおり、本件分割1に係る移転給与等支給額は、1,200万円(6,000万円×20人/100人)となります。

(2) 本件分割2により当社の比較雇用者給与等支給額に係る給与等支給額から控除する移転給与等支給額

 本件分割2は、当期において行われているため、上記2(1)の金額を控除することになります。この場合、本件分割2の日前に開始した事業年度(前期)の給与等支給額は、上記(1)で分割1に係る移転給与等支給額1,200万円を控除済の9,600万円(=10,800万円-1,200万円)となるため、上記3のとおり、本件分割2に係る移転給与等支給額は、2,400万円(9,600万円×20人/80人×12か月/12か月)となります。

5 以上より、当社の比較雇用者給与等支給額は、前事業年度の給与等支給額(10,800万円)から本件分割1による移転給与等支給額(1,200万円)及び本件分割2による移転給与等支給額(2,400万円)を控除した7,200万円となります。


国税庁ホームページ質疑応答事例法人税

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/23/02.htm